中学入試|個別形式による国語の指導法の一例



 


     
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科目別指導メソッド(国語)

国語という科目は算数のように万国共通の公式が存在しません。また要点をまとめた本も書店に並んでいるものの、社会や理科の要点集とは大きく違います。書いていることが著者ごとにばらばらです。
 
勉強しても無駄とは言い切れませんが、何をどう勉強していったら良いものか、議論になりやすい科目であることは間違いありません。
 
また過去の問題集の解答をいくつかの出版物(市販されているもの、塾のテキストなど)を付き合わせてみると、答えにばらつきのあり勉強をしている人を惑わせることが多いというのも他の科目との大きな違いと言えます。
 
これは国語の問題を作る場合、設問に対する問題製作者の主観的な解釈が強く入り込んでしまうということの現れといえるでしょう。
 
この科目についてはどのように教えたら良いものか、私も長い間試行錯誤を重ねてきました。やがて分析をしていくうちに、国語の成績が伸びない子にも二通りのパターンがあります。
 
@本文に書いてある内容は分かるけれど、答え方が分からない場合
 
A本文に書いてある内容がよく分からない場合→読解力に問題がある
 
(注)上記の二通りに生徒を完全に区分できるという意味ではありません。文章の難易は様々ですから、同じ生徒がある場合には@に該当し別の場合にはAの場合に該当するということの方が普通です。
 
分からない段階を区分する意味はどちらの傾向が強いかにより対策のウエイトのかけ方が変わってくるという点にあります。
 
@本文の内容は理解できても、設問に答えられない場合の対策・一例
 
設問のついた塾のテキストや過去問題集を用いて、どういうパターンの問題のときにはどのようなことを答えれば点数に結びつくのかという相場のようなものを理解させることで設問に答える能力を養成しています。
 
ここでは物語文で多く出題される心情を問う問題を一例として説明していきます。
 
[サンプル問題] 「メロスは激怒した」(太宰治「走れメロス」より)
 
設問 メロスはなぜ激怒したのですか。五〇字以内で記述しなさい。
 
ここでは「走れメロス」を読んだことがあるという前提で、話を進めさせて頂きます。
 
国語の苦手な小学生にこの問題を出すと、多くの場合解答を書き出すことすらできません。
 
そこで口頭で答えて良いと言うと「ムカついたから」とか「すんげえ腹が立ったから」といった返答をする子が何人か現れます。紙の上で答えてもらうときには白紙だったのに、口頭で答えてもらうと答えられるというのは、ぼんやりと解答は頭の中にあるのだけれど紙に書くほどの内容ではないと思っているからなのでしょう。
 
確かに「ムカついた」とか「すんげえ腹が立った」と書いてもまず○はもらえません。これらの言葉は単に「激怒した」という言葉を言い換えたにすぎず、理由にはなっていないからです。また到底文字数も足りません。
 
そこで私はこの種の心情問題は大別して以下の二つの着眼点があることを教えています。
 
心情問題で答える内容 着眼点その1
 
採点する側がこうした問題で何を書くことを要求しているかと言うと、多くの場合それは登場人物がその心情を抱いた「きっかけとなる出来事」です。
 
現実の世界でも何も出来事が発生していないのに、ある人物が何らかの感情を持つようになることなどありえません。幸せになったのなら何等かのハッピーな出来事が、逆に悲しい思いをしたのであれば何等かの嫌な思いをさせる悪い出来事が起こっているはずです。
 
先の問題に即して言えば、メロスが激怒したきっかけを日本語でまとめてみてくださいと言っていると捉えれば良いのです。
 
ところでここで大切なのは幸せになったのなら良い出来事を、悲しくなったのなら悪い出来事をまとめなければ答えにならないということです。常識的にはネガティブな影響を与える出来事があった直後に幸せな気分になったとしたら、その出来事だけを書いても解答になりえません。
 
あまりに当たり前のことですが、国語の苦手な人の解答を見ているとこうした脈絡を意識せずに書いていることが多いのです。
 
□肯定的な気持ち←肯定的な出来事で説明する(自分の思い通りに事が運んだ等)
 
□否定的な気持ち←否定的な出来事で説明する(自分の思った通りにいかなかった等)
 
また肯定的な気持ちを記述するときに「×××という(否定的な)出来事が起こったが、・・・」と解答の途中で逆接の言葉を挿入してから肯定的な気持ちの要因を書こうとする生徒が多いのですが、その必要もないということになります。
 
このような着眼点を持っていれば、解答を作成するのはとても簡単になります。その心情を生んだ「きっかけ」が具体的に書かれた箇所を意識的に探して読み進めれば良いからです。
 
「走れメロス」では人の心を信じることができなくなった王様が、身内や臣下を次々と殺すことを知ったという下りが数行後に現れます。この部分をまとめます。また理由を問うているので文末を「から」で締めくくればまずまずの解答になります。
 
(解答例1)「人の心を信じることができなくなった王様が、身内や臣下を次々と殺すことを知ったから。」(四十一文字)
 
これで七割くらいの点数は入ります。第一段階としてはこれで上出来です。もしこの問題の字数指定が四十文字以内ということであれば「身内や臣下」を「人々」とでも置き換えて解答すれば満点です
 
(国語の解答というのは要求された字数によっても変わります。このあたりも他の科目と違うところです)。
 
心情問題で答える内容着眼点その2
 
先に何も出来事が発生していないのに、何等かの感情を持つことなどあり得ないと言いました。しかし実際に出題される問題の中には、特に出来事らしい出来事が明確に述べられていないものもあります。
 
この場合にも、きっかけとなる出来事を前後関係から自分で想像して書きなさい、というような無理を言っているのではありません。この場合には視点をずらして登場人物の性格や立場を理由としてまとめていけば良いだけです。
 
現実の世界でもそうですが、人間には基本的な性格や傾向というものがあります。些細な出来事が起こっても、こうした傾向というものはなかなか変わるものではありません。
 
例えば穏やかな人なら普通の人が腹を立てる場面でも穏やかなままであることもありますし、短気な人は何でもないことにすぐにカッカと来るものです。そこでこうした性格等を記述すれば心情を説明する説得的な文を作ることができるのです。
 
この着眼点だけで解答を作ることが要求される問題はさほど多くはありません。この着眼点が必要になるのはむしろ、着眼点1だけで解答を作ろうとしても文字数が足りないような場合です。
 
文字数の一割よりも多くマス目が空いてしまった場合には、何か書き落としたものがあると考えた方が良いです。他に書くべきことがないのなら、この着眼点で探せばよいというわけです。
 
この点を先の「走れメロス」についてみていくとメロスの性格として『村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった』という性格を現す箇所が文章中に見つかります。
 
『けれども』で前後が逆のニュアンスになっていることが示されていますが、このうち「激怒した」のに関係するのは後ろの方です。従ってこの部分をコンパクトにして先ほどの解答に挿入していくことになります。すると下記のような解答が仕上がります。
 
(解答例2)「人心を信じられない王様が人々を殺していることを、邪悪に対して敏感なメロスは許せないと感じたから。」(四十八文字)
 
このように何を答えたら良いのかという着眼点に従って解答を作る練習をしていけば、それまでいつも白紙状態だった生徒が見違えるほどに解答のマスを埋めるようになります(このような生徒に読解力の訓練をしたとしても時間の無駄に過ぎません)。
 
なおこのトレーニングをするときの文章の読み方は、本を読むときのそれとはかなり違った感覚になります。本を読むときは文章全体のあらすじや流れが大切で楽しみながら読んでいきます。
 
それに対して設問のついた文章を読むときは、誤解を恐れずに言えば全体的な流れなど二の次です。テストの国語はゲームと同じようにスコアを一点でも多く取った人の勝ちという世界です。
 
基本的に問題を作った人の視点に立って設問に答えていかなければならないので、読み方はそれに拘束されたものになります。文章を「読む」というよりは単に「答えとなる箇所を探す」という感覚が強く要求されます。
 
私が心情問題を指導する場合にはこのような方法で「理解はできるけれど答え方が分からない」という問題を解消しています。

 A読解力に問題がある場合の対策・一例
 
読解力が足りない場合には様々な原因が挙げられます。
 
 
(1)語彙力不足の場合
 
(2)きちんと意味を把握しながら読むのを面倒がって、雑に読んだ結果意味を理解できない場合。
 
(3)読んでいる文章に関心がそれまでなかったので話題についていけない場合(本に書いてある内容はしばしば他の著者が書いた本の内容に似ています。従って同じように初見の文章であっても、一度似たような内容の文を読んだことのある生徒の方が当然有利になります)。
 
いずれも本を楽しく読む習慣ができていれば解消できる問題だと言えます。そこでこの場合には本を楽しく読んでいこうという話になります。
 
以下では読解力の問題は答案の作成技術の問題に比べると実に複雑な問題が絡むので、一般的に述べることが困難です。以下さわりとなる部分だけ説明させていただきます。
 
この場合の教材としては塾のテキストの文章でも良いのですが、普通の本(ただし比較的短めのもの)を使った方が効果的です。
 
塾のテキストを使うと問題を考えながら読まなければならないのが気になって、なかなか情景を想像しながら内容に集中して読むということはできないからです。
 
またテキストの文というのは本の一部を抜粋しているため、原書であれば楽しめたはずの展開を楽しむことができないことも往々にしてあります。
 
ただし受験勉強で本を利用することには抵抗を感じるご家庭もありますので、その場合にはテキストを使うことにしています。
 
(注)読解力を養成するときの本の読み方と前述の設問に答える訓練をするときの読み方は根本的な違いがあります。設問を答えるときには、解答のヒントになる部分をターゲットとして読み進めていくということはすでに述べた通りです。
 
では授業で具体的にどのように読解力のトレーニングをしていくかと言いますと、まずは生徒に朗読をしてもらうことが中心になります。朗読をしてもらえば、その生徒がどの程度の語彙力があるかとか、どの程度に内容を把握して読んでいるかといったことが分かります。
 
朗読をしてもらった後、分からない言葉のチェックや内容理解の確認ということをすることもありますが、私はなるべくこうした時間は抑えています。分からない言葉や内容を教えることは簡単ですし、それなりに学習効果もあるのですが、弊害も大きいからです。
 
知らない言葉の意味を自分で考えようとする力や調べようとする力、文章の意味を自分だけで理解していこうとする態度が身につきません。代わりに意味が分かっていないなと思えるところの行間に潜んでいる当たり前の事柄を説明します。
 
漠然と読んでいるとなかなか気づけないものですが、当たり前の事柄と本に書いてあることを付き合わせれば「ああ、そうか、だからこの部分は面白いわけか」と目から鱗が落ちることはしばしばあります。
 
このように知的好奇心を刺激していくと、本をもっと読んでみたいという気持ちが起こるのを待ちます。
 
読解力というものは相対的なものなので、国語の成績のことを考えると、この方法だけではなかなか目に見える成果が上げにくいのも事実です。そこで前述のテストの点の取り方と平行してやっていくことも大切です。
 
点数が伸びればそれだけで読解力は伸びたという思いこみを抱き国語を好きになる可能性もあります。指導スタイルのページで述べた通り、こうした思いこみはとても意味があります。

 






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